事業内容について教えて下さい。飲食店のアルバイト、社員、店長が日々の振り返りを行う「botto(ボット―)」という飲食店の店舗運営を支援するコミュニケーションツールをつくっています。職場に関わる人全員が仕事に「没頭」できる環境づくりのお手伝いをしています。どのように使うのでしょうか?4つの質問に答え、簡単に1日の振り返りを行います。スタッフが仕事中に気がついたことや、課題に思ったことを書き出し、個人の振り返りを全員で共有できたり、コメントを返したりすることが出来ます。スタッフからの意見やアイディアを引き出し、全員が「自分ごと化」してお店づくりを楽しめる、一人ひとりが主役になれる、そんなコミュニケーションツールです。どうして独立しようと思われたのですか?元々は、幼稚園から始めたサッカーにのめり込んでいて、プロ選手になるのが夢でした。中学では東京都選抜に選ばれたり、高校まではレギュラーを外れたことがなかったり、自分の腕に自信を持っていました。でも、大学ですごく上手な選手を目の当たりにして、「全然あかんやん…」と挫折しプロになる夢を諦めました。その時初めて社会に目が向いて「働くなら社長になろう」と安直に考えたのがきっかけです。1社目にインテリジェンス(現パーソルキャリア)に入社したのも、ビジネスを学べると思ったからです。「はたらくを楽しもう」というスローガンに惹かれて入社しましたね。インテリジェンスではアルバイト求人広告の営業をしていました。働きながらビジネスアイデアを考えていたのですが、「どうしたらみんなが幸せに働けるのか」「仕事に没頭できるのか」「働くを楽しめるようになるのか」、そんなことばかり考えていました。ひな鳥が初めて見た動くものを親鳥と勘違いするように、原体験ってめちゃくちゃ大事だと思っています。自分もそうでしたが、仕事の原体験がアルバイトである人が多いことに気が付きました。何かをして対価をもらう、という「はたらく」そのものの行為が自意識を持って初めて行うのはアルバイトだと思ったんです。仕事の原体験であるアルバイト体験が楽しいものに変われば、その後卒業して就く仕事への取り組み方や関わり方が変わるんじゃないかと。だから、サービス業にフォーカスして、その仕事体験を変えたい、と思ったのが起業の具体的なきっかけです。そうだったんですね。サッカーは長年続けられていたんですか?はい。小学生の頃は強いチームに所属していて、11人全員がテレパシーで繋がっているような、あうんの呼吸があり、一体感を感じながらプレーしていました。それが忘れられなくてずっとサッカーを続けられたんです。自分にとっては、サッカー=アイデンティティー、自分の全てという感じです。それくらいのめり込んでいて、正直、昔はサッカーの上手い下手でしか人を判断できないクズ野郎でした(笑)仲間にも嫌われていたと思います。いや、実際嫌われていました(笑)でも、大学でプロは無理だなと諦めた時、人生のものさしがなくなったんです。そこでハッとして。挫折したことで、自分の愚かさに気が付きました。今まで、なんて狭い視野でしか物事を見られていなかったんだろうと。今まで馬鹿にしていた下手くそな先輩の良いところが輝いて見えるようになり、人間はなんて素晴らしいんだと思いましたね。大手を辞めて、独立することに不安はありませんでしたか?全くありません!むしろ、絶対やれる!と思っていました。AIの台頭で人の仕事がロボット等に奪われると言われています。「ロボットには出来ないことは何かな」と考えたら、それは「人であること」だったんですね。ロボットは人間にはなれません。温かみ、笑い、感情がないのです。だからこそ、人と接する接客業や飲食店は無くならないと思いましたし、人にまつわる課題は必ず起きるので、方向性に間違いはないだろいうと確信を持ってました。妻も背中を押してくれました。家族の了解を得られたことは大きかったです。bottoは飲食店の皆様の「声」と共に作られたんですよね。はい、まさにその通りです!簡易なプロトタイプから使っていただき、製品にフィードバックをもらい続けて、ようやく今の形に仕上がってきました。bottoの原型が完成した後も、お客さんからの意見で改善を繰り返しました。最初は機能も全然なかったんです。実際に店舗に通いまくって、とにかくインタビューを繰り返し、そこではたらくスタッフの「声」を聞きました。なので、「ユーザーさんと一緒につくっている」というのがbottoの特徴だと思います。印象深い出来事はありますか?あるお店のアルバイトさんから、「bottoのおかげで自分らしく働けるようになりました」と言われたことです。自分が出せずに、縮こまってバイトの時間を過ごしていたのが、bottoで他のスタッフとコミュニケーションをとることで素が出せるようになった、と言われたときは本当に嬉しかったですね。人間関係の構築にbottoが活かされているのは、とても有り難いです。コロナ禍で苦しい状況が続いていると思いますが、どうbottoを生かしてほしいですか?お世話になっているお店も、なかなかアルバイトにシフトを入れてあげられる状況にない店舗がほとんどです。こんな状況だからこそ、会話を増やし、密なコミュニケーションの役に立てれば、と思います。休業中だけど近況報告をしたり、仕入れの見直しをしていることの情報共有だったりを、bottoでしている店舗があります。「この期間にパワーアップしよう」と、力を蓄えている人たちを見ると頭が上がりません。あるユーザー様では「botto」を書くことが就業確認書に明記されているくらい、重要視して使ってくれているユーザー様も出てきていて、僕たちも身が引き締まります。最後に、bottoが目指す未来を教えて下さい。お店に関わるすべての人が「botto(没頭)」している状況をつくることです。働く時間=お金 ではなく、誰かを喜ばせること=没頭いつの間にか、誰かを喜ばせることが人生の喜びとなることで幸せのループを生み出したいです。