株式会社botto(以下、botto)は飲食店の店舗運営を支援するコミュニケーションツール「botto」を正式リリースしました。新型コロナウイルス感染拡大で苦境に立たされている飲食店に希望の光を―。離職率低下や業績アップの可能性を秘めるツールの開発秘話を、自慢の焼き鳥が有名な福岡の大人気居酒屋・ちんぷんかんぷん(以下、ちんぷん)を経営する株式会社WOF(以下、WOF)の伊藤亮輔代表と、bottoの水田匡俊代表の対談形式でお届けします。離職率を下げることが目的だった伊藤:6、7年前、求人を出したいと思っていたときに出会ったのが水田(元人材サービス会社の営業)です。年齢も同じで、起業したいという思いも聞いていたので「何かあったら言ってね」という感じて飲みに行き、意気投合しました。水田:元々はサービス業向けの仕事をしようと思っていたので、独立してすぐ挨拶に行きました。でもその時はまだ、事業内容は固まっていませんでした。伊藤:事業が決まっていなかったみたいなのと、離職や人材採用で課題を持っていたので、人材コンサルティングで入ってくれないか?と頼んだのがきっかけですね。水田:新規採用よりもすぐ辞めないような組織を作るのが先だと提案したのが最初です。採用も人が足りなくなってから募集ではなく、長期的に計画を立てて求人掲載の計画を立てるべきだと。話していく中で伊藤さんから「それなら飲食店に限定してサービスを作ったほうが良いと思う」と助言を受けて、サービス業から飲食業にさらにフォーカスを狭めました。伊藤:僕たちのニーズに水田の思考がマッチしていました。同世代で独立する人もなかなかいなかった。苦労も分かるし、やる気も分かる。お互いウィンウィンになるかな、と。どちらかというと水田のウィンが大きいけど(笑)求人で来た人を、どう辞めさせないか、どうしたら離職率を低く出来るかを一緒に考えるようになりました。振り返りの大切さを実感水田:ある店舗の店長さんが、バイト終わりに新人に紙を渡して今日感じたことや気づいたことを書いてもらったそうなんです。そしたら、たくさん意見を書いてくれていたみたいで。それだ!と思って。最初はLINE(無料コミュニケーションツール)で仕事の振り返りなどを送ってもらいました。そこがスタートです。伊藤さんにも2週間に1回程会って、店舗の変化や話を聞いたり、繁盛店を回ったり、たくさん勉強させてもらいました。伊藤:そもそもbottoは、人が育つ仕組みになっています。僕は人材育成には2つしかないと思っています。マニュアルで教え込むのか、自分で考えて成長するか。居酒屋は特に人との関わりが大事な商売で、マニュアルだけで全てを教えられるような答えがありません。 だからこそ、自分で考えて行動することの大事さを痛感していました。お客さんが求めているのは、便利さではない。お店での体験を求めている。居場所を楽しんでいる。そのイメージがあるんです。お客さんのことを自分の目で見て考える力が必要なんです。水田:その通りですよね。なので、自分の行動を客観的に振り返る、お客様の目線で考えるということが大事なんだと思います。伊藤さんや、他の飲食店の方の助言がなければbottoは存在していません。一緒に作り上げてきたbotto伊藤:一緒に作ってきたと思っています。最初から関わっている分、忖度なしに「この機能がほしい」とか「これは使いにくい」とか全部言うよね。うちがやってほしいことを言っている。都合のいいツールにしている感覚です(笑)水田:いただいた要望は数えきれないくらいありますね。伊藤:ツール自体に魅力があるからね。実際に使ってみて、風通しが良くなって、やる気が湧いてきたという子が出ているのも事実です。水田:店舗で起きている変化ってどんなことがありますか?変化を見られるのが一番の変化伊藤:店舗での変化もあるけど、我々役員や代表が変化を見られるというのが第一の変化。全員の書き込みを幹部役員が見られるのは有り難いです。アルバイトがどういう働きをして、社員がどういう教育をしているかが実際に見える。アルバイト一人ひとり、全員と話す時間はなかなか取れないですよね。店舗にいないけど、店舗にいる状態がつくれる。水田:たしかに。伊藤:文章で分かるんです。モチベーションが低い子は文字数が少ない。トゲのある書き方から不満が感じられることもありましたよ。「自分のおすすめの品をお客様に提案したら、喜ばれた。もっと自分から提案してみたい」と書いてあったことがありました。「おすすめしてね」というのはマニュアルにできるが、自分で考えて自分のおすすめを紹介できるのはマニュアルでは出来ないことです。水田:ある店舗の社員の女の子で、理念について書いていたこともありましたよね。「お客さんを感動させたい」と書いてあるのを見て、そんな事言うようになったんだなって、その子の成長に感動してましたね。伊藤:そういう変化が分かるのが嬉しいよね。お店の変化としては、離職率が確実に減りました。新人の子が入りやすいのかな。それぞれの立場によって違う利点があるんですよ。新人の子はコミュニティーに入りやすい。文字で書いて返信があると、口では言いにくいことも書けたりします。中堅の子は、慣れてきて不満やプライドが出てきます。 そのときに一歩立ち止まって、自分を振り返り、客観的に判断できるかどうかが大事。自己評価でずっと同じ点数の子は成長が止まっているんだな、とか色々と分かります。それを見て、店長や僕ら幹部が声をかけることが出来るんです。アルバイトも仕事ですから。同じ時間働くなら、考えて行動できる人が、どの会社やお店にいっても活躍すると思います。店長育成でのメリット水田:僕たちのサービス開発の思想には、経営陣やエリアマネージャーが店長の能力を引き出しやすいようにすることも入っています。店長さんが使うメリットってどんなことがありますか?伊藤:店長以上だと、コメントの返信内容を見てお店の雰囲気が分かります。その返信を見て、「少しおかしいな。変だな」と感じたら問題が大きくなる前に火消しが出来る。この店は今店長に任せても良い、この店は注意して見ておこう、とか。 店長の観察力がお店をうまく回すためには必要不可欠ですからね。水田:それに気がつく伊藤さんもすごい。他にも使ってよかったことありますか?伊藤:風通しの部分ですね。小さな改善点もアルバイトの子達が書き込んでくれるので、店舗内の改善のスピードが上がりました。次から次へと課題点は出てきますよ。常に百点はないと思っています。水田:元々御社は成長意欲の高い職場の印象ですが、そういう変化を感じてもらえていて嬉しいです。成長スピードが数倍に伊藤:スタッフの成長スピードが2、3倍になっていると感じます。bottoが一翼を担っているのは確か。水田:ユーザーさんのほうがbottoの意義を深く理解して使ってくれているんだな、と実感しますね。使いにくいところも指摘してくれるので製品開発も速くなり、助けられています。「もっとのびのびしたほうが良いよ」という社長のコメントで、今年になって急成長した子がいると聞きました。なぜそう思ったんですか?伊藤:忙しくて現場がピリピリしていたときに、「人のせいにするのはどうかと思う」とbottoに書いてあって。負けず嫌いがコメントから伝わってきたんですよ。物を言うのに臆する子じゃないなと。そういう子は自由にやらせるとすごく伸びるんですよね。お店を自分の居場所だと思ってくれている子の背中を、ぽんと押しやすくなったかなと思いますね。水田:伊藤さんの人を見る力とbottoの相乗効果で、鬼に金棒状態ですね。ここまで使いこなしてくれるとは。伊藤:いえいえ。使いこなしすぎているので、コストパフォーマンスは凄く良いですよ(笑)1店舗1万円くらいでしょ。売り上げを上げることは、人材を育てることに直結するので、簡単に元を取っていると思いますよ。声が上がって、改善され、お店が良くなり、売上が上がって、働きやすい環境になって、人が辞めなくなる。メリットしかない。デメリットはないです。管理するリーダー側へのメリットが大きいです。口下手な店長と、うまくコミュニケーションをとれる店長で店舗によって売上や離職率に差が出ていたんですけど、bottoでうまくフォローできるようになりました。水田:まだまだ進化していくので、変わらずフィードバックほしいなと思います!